デジタルテクノロジーが進化すればデータの重要度はますます高まり、さらにアプリケーションの進化によってさらなる価値が引き出される。データ重用はデータの増大化を生み、高度化するアプリケーションはサーバー負荷と運用の難度を高く引き上げた。そしてマルチクラウドITは、こういった状況から生まれて進歩してきている。

現代においてクラウド活用は、企業競争力の維持向上に欠かせない要素として広く認知されている。しかし、クラウド黎明期より一段落経過した今日では、セキュリティのみならずコスト効率、パフォーマンス、拡張性に課題を呈する企業も出てきている。課題の根源を精査すると、多くの要因はハイブリッドクラウドに集約される。ビジネス要件を満たすためにはインフラソースを最大限に活用する方法を意思決定する必要があるが、組織がパブリッククラウドサービスを採用する過程において、サーバーテクノロジーを中心としたオンプレミス設計に配慮せずに分断されたままにパブリッククラウドに突入しているという背景が存在する。オンプレミスがクラウドに影響を与えないと楽観視する向きもあるが、いずれも企業インフラサークルに属するのは揺るがない事実であって、連携と協調のバランスがハイブリッドクラウドの主旨であるため影響は必至であり、ここに問題があることを冷静な視点を有する各界のトップランナー企業は気づき始めている。

本書は、ハイブリッドクラウドにおける課題を調査に基づいて明らかにし、原因分析と解決施策を提言する。調査はESG社が主体となってアジア太平洋地域、および中南米に拠点を置く大企業と中堅企業1,257人のITインフラストラクチャの意思決定者と基幹業務の意思決定者を対象に実施された情報ソースに基づいたものだ。指針として信頼できるデータを掲げるとともに的確な分析が展開されている。さらにオンプレミスにおけるモダンサーバーとレガシーサーバーを明確に定義するとともに、与える影響にも多角的かつ簡潔に言及されている。IT組織の存在大義の一つでもあるデータとアプリケーションの価値を最大限に高めるためにも有用な内容となっているので、IT組織に属するビジネスパーソンにぜひともご一読をおすすめする。