ビジネスにおけるITの重要度は日々増しており、新たな技術や活用方法が創出される中、企業が構築から運用までを常に最適かつ最善に保つことで、優れた競争力は生み出される。そして実現には多くの業務が伴い、迅速な判断と実行力が備わった組織構造はもとより、エンジニア個々のスキルなしには成立しない。

エンジニアの人材不足は絶えず叫ばれ、特に高いスキルを持つエンジニアは業種業界問わず引く手あまたである。さまざまな経験をもつエンジニアの知見は、ビジネス成長を誘引し、高い企業競争力を生む。一方で、ITインフラは重要ゆえに失敗は許容されにくい。学習意欲が高く自力で専門書を読み漁り知識を蓄積しても、実践と実績が伴わないかぎり、業務で知見を発揮するのは難しい。本来は自社に所属するエンジニアのスキルの向上は最も歓迎されるべきである。しかしながら、縦割り階層が大半を占める組織構造で業務に奔走する日々を過ごすエンジニアは、時間的余裕も実戦的な学習機会も確保されていない現状を憂慮すべきではないだろうか?

本書は、Red Hat最上位認定資格「Red Hat認定アーキテクト(RHCA)」を個人で取得した富士通クラウドテクノロジーズの現役アーキテクトに、取得意図や学びのポイントをインタビューとして収録する。同氏は業務でLinuxをはじめとするさまざまなOSS(オープンソースソフトウェア)に触れており、企業風土としても業務以外で学びの場を持つことが奨励されている。業務でRHEL(Red Hat Enterprise Linux)を扱う機会が増えたことから、Red Hatのトレーニングに興味を持ち、トレーニングを開始する。実技を伴う認定試験は実戦的で業務に生かせる手応えを感じ、携わる業務をより深く知りたいと思う学習意欲は高まるが、やはり時間と費用が障壁となった。クラウド上に自由にアクセスできるラボ環境を展開する「Red Hatラーニングサブスクリプション」を活用し、種々の認定資格取得を積み重ね最高レベルのRHCAを得るに至る。そしてインフラ全体について幅広い知見で設計、構築、管理を業務に反映できる貴重なエンジニアとして活躍のステージを高めているという、エンジニア諸氏のキャリア設計を摸索する上で好事例となる内容になっている。また、企業成長を目指す経営層、ビジネスパーソンも本書をご一読のうえ、エンジニアのスキル向上に最適な学習の機会、環境作りの契機としてぜひともご活用いただきたい。