現代のあらゆるビジネスにとって、データは価値を持つ。企業の内外で展開されるすべての活動からデータを取得することで、企業成長や競争力の向上のみならず、生産性や社員の労働環境に至る改善にも有効となる。

各所で提唱されるデジタルトランスフォーメーションやデータドリブンも、データの存在なくしては成立せず、ビジネスはデータ活用の百花繚乱時代を迎えているといえよう。このように業種や事業規模を問わず多くの企業が積極的なデータ活用に取り組む今日にある。しかしデータから価値を存分に引き出し、企業価値にまで高められる組織は、BIツール市場の活発さから比較すると、依然として少ないように思われる。本来ならばBIツールの導入活用のみならずデータサイエンティストなど専門家の活躍によってデータが企業利益を生み出すはずだが、設備も体制も万全であるにも関わらずそこに至らない理由は、各業務にあたるビジネスユーザーを置き去りにしてしまうような運用姿勢にあるのではないだろうか。

本書はデータ活用の課題と要因を指摘するとともに、データが企業価値を創造する基盤としてデータの民主化を提言し、実現へのポイントを解説する。データ活用の潮流から、企業がより明確な実益を求むのは当然といえ、近年はデータの民主化に関する著書も増えてきた。「データの民主化」とは、誰もがデータにアクセスし、分析を行えるようにすることと解説させることも多く、ビジネスユーザーがデータに基づく迅速な判断や施策に可能にするとされる。無論、実現は容易ではないが、データの民主化に対する誤解がより実現を難しくしている側面もある。本書ではデータの民主化を「誰もがデータから価値を引き出せるようになれること」と定義し目的を明らかにしており、誤解の根源を「セルフサービスとセルフフィシェンシー(自給自足)」の混同と分析し、二者の違いを例を掲げわかりやすく解説することで要点となる概念を整理している。また整理された概念に基づき、データの民主化を促進させるBIツール選定のポイントを明示する。巻末にはデータの民主化に成功した3社の実例も掲載されており、ますますデータ活用が企業成長の要点となることからも、多くの企業人にぜひともおさえて頂きたい内容となっている。