ビジネスは意思決定の連鎖によって成立する。企業組織は成立から活動に至るまで、経営層の意思決定を源泉とする事業計画によって動いているといえるだろう。企業成長に欠かせない挑戦と改善を促す目的として、PDCAサイクルの管理手法が広く活用されてきた。

 

しかし新型コロナウイルスの拡散以降、日常は大きく変化した。PDCAサイクルを回そうにも、Plan(計画)を立てることすら難しいのではないだろうか? そもそも計画は企業組織内の「当たり前」の日常を前提とする「流れ」を汲んだ予測の範疇に限定されている。コロナ禍の今日を見渡せば、オフィス勤務はテレワークに代わり、デジタルが仲立ちとなって業務を継続している企業も多く、以前の「当たり前」ではない現実が既にある。ポジティブなニュースも多く報じられてきたが、コロナ禍の動向は未だ予測不可能だ。自社企業だけでなく、ビジネスの展開先である顧客も同様に予測不可能な世界にいることも忘れてはならず、計画はさらに困難を極める。

 

本書「“慣習”を見直すフレームワーク」は、変化著しく予測の難しい現状を分析するとともに、市場・顧客心理の変化をとらえる必要性を説き、企業成長を停めないための新たな思考を教示する。ある意味でPDCAサイクルのみに固執すれば企業は停滞に陥り、企業の存在すらも危ぶまれる昨今にある。本書では、予測のできない急速な変化に対応する考え方として「OODAループ」を紹介する。OODAループは、戦闘機パイロットの意思決定プロセスを起源に、ビジネスにも適用できるフレームワークとして欧米では広く活用され、

観察(Observe)
状況判断(Orient)
意思決定(Decide)
行動(Act)

の4ステップの反復を特徴とする。サイクル(行程)ではなくループであることからもわかるとおり、連続性をもって細かく数多く実行されることを意味する。デジタルを前提とした企業活動における実践を紹介すると共に、OODAループとPDCAサイクルとの組み合わせ活用、企業事例をも展開する内容となっている。計画を排除した極限のフレームワークの目的は生還にあり、生還の積み重ねは究極的に国家の勝利へと繋がる。ビジネスにおいてもDXを促進させる企業成長の一助となり、複数の思考を持つことは競合との差別化にも優位性を発揮するのではないだろうか? 現実と対峙するすべてのビジネスパーソンにご一読を強くおすすめする。