COVID-19の世界的な拡散によって我々は未だかつてない混乱の渦中にある。歴史上パンデミックは存在したが、地域に限定されたり一部の業界だけが被害を被っていたように思われる。グローバル化した現代では人も物も情報までも今まで以上に活発に動いて循環しており、社会構造から全世界規模のパンデミックは、誰にとっても他人ごとではない。

 

ビジネスにおいては、近年ほどデジタルが業種業界問わず広域に存在力を発揮した時期はないだろう。ある意味、企業活動全域でデジタルに大きくシフトした現象を生んでいるように思われる。以前より企業改革が叫ばれデジタルの有用さを誰もが認識し、大規模災害の経験から事業継続計画への重要さの理解も進んでいた。現実の取り組みには業界や企業によって大きく差違が存在する。デジタル化を活発に推進させ事業継続計画を備える先進企業であっても、今般のパンデミックを予知し混乱なく即時対応できた組織は皆無といえよう。未来とは、まだ見ぬことであり完璧に備えることは不可能だ。しかし経験から学び、物事の根幹を見極め強化していくことはできる。企業のITリーダーが経験から学び、何があっても揺らがないとまでは言えなくとも、ビジネスの根幹を見極める資質と強化していく行動力こそが今求められ、企業の未来を創造していくのではないだろうか。

 

本書は、現在の世相を読み解き企業のデータセキュリティとデータガバナンスの強化について解説する。ビジネスも生活もデジタルの重要度が急上昇する昨今の状況を本書は「デジタルの強みと弱みが浮き彫りなった」と評し、データ侵害に伴う企業の被害コストを掲げ、激しさを増すサイバー攻撃の脅威に警鐘を鳴らす。予測が難く変化著しい状況下においてCIO(最高情報責任者)とCISO(最高情報セキュリティ責任者)の決断が、ビジネスを継続させる以上に成長をも左右すると指摘する。企業の継続と成長を育む素地を「信頼と透明性」と本書は定義し、調査データとともに重要性を説き強化への指針を提言する。渾沌とした世相を的確に分析し、企業の進むべき方向性を示しておりCIO/CISOはもとより、今を生きるすべての企業人にぜひともご一読いただきたい内容となっている。