近年の企業のIT活用を俯瞰すれば、かつてないほどに高度化し、一昔前であれば巨大企業だけが享受できたデータ活用やツール群を事業規模を問わず多くの組織が使いこなし運用している。要因はクラウド、コンテナ、VMなどに代表される、枚挙に暇がないほどの技術革新が規模と投資の裾野を広げたことにほかならない。
読者諸氏の企業においてもITシステムが稼働し、日々の業務を支えていることと思われるが、運用は2~3年前と比較して複雑化してはいないだろうか。世界的規模の新型コロナウイルスの拡散以降、リモートワークが日常となり、オフィスの縮小やシステムのオンライン化/クラウド化が進むのが今日の風景といえる。IT活用の高度化に加え、外部からの接続の安全性確保やリモートでの生産性を高める環境整備など、運用対象となるシステムは増え、構造自体が複雑化している。当然、IT部門の貢献があって成立はしているが、見るべき要所は増え、複雑な物ほどリスクは潜在し、属人性の排除も難しくヒューマンリソース自体にも限界がある。
そのような事態を打破すべく本書「withコロナ時代を支える 企業ITシステムの運用自動化/効率化」では、人的運用の発想を転換する自動化/効率化をガイドする。本書は「運用自動化/効率化の基礎知識」「複雑化するITインフラ運用を自動化するツール・サービス」「被害の拡大、環境変化に対応するセキュリティ運用の効率化とは」の3部で構成され、企業を取り巻くITシステムの現状整理から、具体的な自動化ツール7種を挙げそれぞれの特徴を解説する。さらに最重要項目であるセキュリティについても現状分析し、効率化や自動化の要点を展開する。現在の社会動向を冷静に捉え、企業ITの潮流を基礎から理解できる秀逸な内容となっている。今日においても企業ITは省力化と効率化に進むべきだろう。時代に即したIT運用の実践に向けた必読書としてご一読をおすすめする。