現代のビジネスにおいてITの存在価値は大きく、業種業態を問わず活用はあたりまえとなっている。ひと昔前であれば“IT企業”はIT関連のサービスやインフラを提供する企業、もしくはITを駆使してビジネスを拡大させた特定の企業を指し示す言葉であったが、企業組織がIT部門を漏れなく有する今日は、“総IT企業化”の時代ともいえるだろう。

 

ITの進化と浸透は、企業のIT活用領域の高度化を促進した。事業規模を問わずアプリケーション開発が実践され、開発能力が企業競争力に直結するとの論調も散見される。しかし開発能力だけではビジネスが発展することはなく、的確な運用とスピードを伴うリリースがあってこそ実現する。開発と運用のボトルネックを解消すべくDevOpsの開発手法が登場し、先進企業の採用によってビジネスを拓く急先鋒として広く認知されている。DevOpsの実践にはテクニカルな要素だけでなく組織構造やコミュニケーション論など多項にわたる構造改革を要し、容易ではない。苦難を乗り越えDevOps文化を発展させるべく取り組む企業も増えているが、DevOps組織のすべてが高パフォーマンスを発揮しているとは言い難い。今一度、成功の可否を冷静に判断し、障壁を認知・克服する必要があるのではないだろうか?

 

本書「DevOpsガイドライン」は「成功への障壁を打ち倒すめのベストプラクティス」と銘打ち、高パフォーマンスなDevOps組織に至る道筋について解説する。軸としては、DevOpsエキスパートであるJez Humble氏の提唱する「CALMSフレームワーク」{ Culture(文化)、 Automation(自動化)、Lean(無駄がない)、Measurement(測定)、Sharing(共有)}を支持し、データ測定の重要性を強調する。DevOpsを採用するが実は機能不全に陥るケースも少なくなく、全5章にわたり上流から下流に至るまでDevOpsのビジネス効果を享受できるポイントを的確に指摘する内容となっている。DevOpsは高パフォーマンスの特効薬にあらず、推進すればビジネスが発展する訳ではない。本書のように経験・教訓が開示されることは喜ばしく、DevOps文化は成熟に進み、今や主流となりつつある証左ともいえよう。DevOps組織はもとより、DevOpsに足を踏み入れる前に是非ともご一読をおすすめする。