企業のデジタルトランスフォーメーションに代表されるように、現在のビジネスパーソンはデータの重要性を理解している。デジタル化されたマルチチャネルの世界では、かつてないほど多様なデータが大量に生成され、様々な業種業態の組織においてデータ取得は至極当然に実施されている。

 

しかしデータに活路を見出す企業はあまたあれども、すべての企業組織が変革を実現しているわけではなく、社内のデータと人材の価値を最大活用できている組織はそう多くないというのが現実といえよう。データに活路を見出す組織は、おおよそBIツールの導入と、優秀な人材の配置がなされているが、分析環境の拡張はうまくいっているのだろうか? 真にデータドリブンな組織とそれ以下を分かつ稜線はどこにあるのか? まずは分析環境の課題の認識と理解が急務といえる。

 

本書「変革を実現する分析環境」は、企業のデータ分析環境の実状を調査事例から考察し、課題解消の方向性を提示する。データドリブンな組織の大義を「データドリブンな意思決定を優先する全社規模のカルチャー」と見出し、分析環境の拡張を促進要素と定義している。理想とする分析環境を「ユーザーがビジネスに関する疑問への回答を自分で得られるようにすること」し、セルフサービス分析の重要性を強調し、実践された成功例とともに実現への要点を的確に捉える内容となっている。人、物それぞれに優れた資質が備わっていても、それだけで物事は大成しない。燃料として注ぎ込まれるデータのエネルギーが組織の変革として変換されるにはデータの分断があってはならず、高効率のエネルギー変換装置としてのデータ分析環境が機能しなければならない。さらに変革をビジネス成長に転化させるデータドリブンな組織は、モダンBIを軸に組織の毛細血管の末端に至るまで変換損失なきデータ活用を実践しているのではないだろうか。データを重視し活用しているすべてのビジネスパーソンに本書のご一読を強くおすすめする。