2019年働き方改革関連法案の成立以前から、国内の労働力と生産性に関する課題は提起され続けて来た。関係各省が企業に改善を呼びかけるも、全体を見渡せば長年に渡って長時間労働が染みついた企業側と労働者の間の変化は軽微なものであったように思われる。

 

少子高齢化社会に起因する労働人口の減少や介護離職など先行きも暗い。この傾向に対して、生産性の向上を目指すDX、大都市中心への偏った人口流入を是正を目指す地方創生などが効果を期待される。DXはオフィスに限定された生産性向上に多くの企業は注力し、居住地と出社先の課題は変わらずは大都市中心にのままに変化しなかった。テレワークの活用も省庁より推奨されていたが、サテライトオフィスの設立や在宅ワークへの取り組みは一部の先進的な大企業だけであった。本来ならば最新テクノロジーに長けたIT関連企業であればテレワークの導入は可能なはずだが、ビジネスの相手の多くはリアルを前提とした長年の商習慣に依存するので大都市の呪縛が強い。

 

現在の状況に目を向ければ、コロナ禍の感染症対策という形で国内企業は半強制的に業務の多くはオンラインに切り替わり、社内外問わずやり取りをする相手もオンライン中心へとシフトした。本書Think IT特別編集号「コロナ禍でエンジニアの生き方、働き方はどのように変わったのか」では、島根県松江市を拠点に活動するRubyの開発者まつもとゆきひろ氏のロングインタビューを皮切りに、地方で活躍するITエンジニアの生の声を中心に企業・自治体の取り組みを紹介する。2006年から松江市が取り組むIT産業振興「Ruby City MATSUEプロジェクト」に携わるまつもと氏であっても「コロナ禍以前は毎週のように東京へといく生活」と語り、コロナ禍によって大きな転換期が訪れたことが伺える。企業でもITエンジニアの個人事情によってU・I・Jターンに対応する拠点整備における効果も詳細に収録している。コロナ禍がもたらしたものは不安ばかりではなく、健全なライフワークバランス保つ可能性を地方時自体、企業、労働者に拓いたといえるだろう。本書をご一読いただき、10年先の仕事と生活を一考されることをおすすめする。