現代ビジネスにおいてITが占める領域は相当に広い。各種アプリケーションを投入したサービスの充実、サービスを停めない冗長性など、企業が良好なITを維持しさらに拡張していくには人材や設備に多額の投資を持続させる必要があった。しかしモノありきの状況はクラウドの登場とともに一変した。
今や企業のパブリッククラウド活用はあたりまえとなっている。多くの組織がデータ活用やオンプレミスのあり方を見直し、DevOpsの開発手法を取り入れている。あわせてオーバーヘッドを最小限に抑えるコンテナ技術の発展も手伝い、よりダイナミックなアプリ開発やデータ活用に邁進できる環境は整った。しかしここで管理の諸問題、つまりは運用の難しさが湧き起こっている。レガシーシステムへの負荷やセキィリティ関連を筆頭に、クラウドとオンプレミス間で複雑に絡み合うコンテナ化アプリケーションの把握など、数多く項目を適切に運用せねばならない。運用に忙殺されては、クラウドの持つアジリティと柔軟性が削がれてしまう。管理の煩雑さ増大を避けるため、多くの組織が単一のクラウドに集中している現状が散見される。
本書「ハイブリッドとマルチクラウドでの成功を支援するGoogleの5つのアプローチ」では、マルチクラウドのメリットを解説し、一般的にマルチクラウド寄せられる疑問を6つ取り上げ、疑問解消とより効率的な実運用への道を示す。ハイブリッドクラウドを採用する企業の多くは複数のクラウドへの移行を望んでいるが、ひとつのベンダーに依存する状況にある。可用性からも将来的にネガティブな要素となる。Googleではオープンクラウドアプローチを提唱し、企業のマルチクラウドへの移行をサポートする。本書では、オーケストレーションの標準ともいえるほどの支持を受けるKubernetesの関わりに触れ、昨今注目されるAnthosによる複数のパブリッククラウド管理について言及する。Google Cloudが管理基盤を担うことで、マルチクラウドが普及へと昇華する新時代を予感させる内容となっている。クラウドは強靱、迅速、自由というあるべき姿に向う。本書はクラウド活用企業がいますぐ読むべき資料といえるだろう。