ビジネスにおける競争力の維持向上は、企業組織そのものの存在意義でもある。デジタル化が進む現代において業種業界を問わず、企業成長にテクノロジー活用は誰の目にも明らかだ。一方で、悪意に満ちたテクノロジーの活用も増加の一途とたどり、サイバーセキュリティへの取り組み・強化は企業に備わるべき器官といえる。

 

しかし、一部の企業ではセキュリティ対策が技術部門に委ねられ、経営戦略との整合性が十分に取れていないケースも散見される。生産性向上などに貢献するアプリ開発などと比較すれば、セキュリティは“攻め”のイメージが湧かない読者諸氏もおられるかも知れないが、セキュリティインシデントを放置されれば受ける損失は計り知れなく、場合によっては企業の存続事態をも左右しかねない。故に、絶え間ないセキュリティ強化は企業を前進させる重要項目と断言できる。

 

本書「CISOレポート~デジタルレジリエンスへの道を取締役会と共に歩む~」は最新の調査データに基に、取締役会とセキュリティ担当者の間に存在する認識のギャップに注目し、現状を分析すると共に解消への道を示す。また本書のもう一つのテーマとして、SISO(最高情報セキュリティ責任者)の立ち位置の変化を指摘する。かつてCISOは、IT部門の一技術責任者と見なされることが多かったが、現在ではその役割が大きく進化し、経営層に近い立場で企業戦略に関与するケースが増えており、本書の内容を抜粋すると2023年にはCEO直属のCISOは47%だったのに対し、2024年には82%にまで増加していることが明らかになっている。この変化に伴い、CISOには単なる技術的な専門知識だけでなく、ビジネス視点を持ち、取締役会と円滑にコミュニケーションを取るスキルも求められている。データに裏付けられた適確な分析と実践的なアドバイスが展開される内容となっており、経営層は勿論のことリーダー層にも本書をご一読することを推奨するとともに、デジタルレジリエンス向上の取り組みに是非ご活用いただきたい。