ビッグデータの一大ムーブメント以来、企業のデータ活用は進化し続けている。クラウドやストレージの導入・調達が容易になるにしたがい、微細な変化も見落とすまいと、多方面で膨大なデータを取得する企業が多く存在する。明確な目的もなく、そのうち何かの役に立つかも知れないので、とりあえず取得しておくというような、単なる「データ集め」に奔走する企業もあるが、データ活用の大義とは根本的に異なる行為ではないだろうか。

正しいデータ活用を進める多くの企業では、収集したデータを経営判断、マーケティング、プロモーション、KPIなどに活用しているが、より深くデータを読み解き“縦横斜め”のより立体的かつ積極的な活用へと進むほど、多くの困難に直面する。またダイナミックに企業活動を展開するならば外部のパブリッシャーやベンダー等を数多く利用するものの、他データとの協調を求めるとデータ準備とクレンジングに多くの時間と労力を費やすケースが多く、データ活用の最大の利点である即時性を失いがちだ。

本書は、ホテル予約&料金比較をワールドワイドで展開する「トリバゴ社」におけるデータマーケティングの改善施策を紹介する。成長著しい同社は早期よりデータ活用に注力し、「揺るぎないフォーカス」「熱心な学習」「確かな証拠の力」という価値観をもってビジネスを成長させてきた。しかし、社内の支出額やブッキング情報、収益といった貴重なデータを外部のマーケティングデータと同期させる“より高度な領域”へ歩を進めると、経験豊かなマーケティングのエキスパートをもってしても「ほとんどの時間をデータの準備とクレンジングに費やす」状況に陥ってしまった。作業フローの煩雑化はスピードの低下を招き、低下を補填するためにチームメンバーの業務負荷増大を強いてしまうことになった。それは大きな機会損失だけでなく、労務面においても看過できるはずはない。そこでトリバゴ社は、データ統合とハーモナイゼーションの自動システムに活路を見いだし、構築を実現させた。もたらされたシングルソースの確立は、全方位にメリットを発揮する。テクニカル面だけでなく“データ活用トップランナー企業”における最先端の“走りっぷり”をとくと知ることのできる内容となっている。マーケティング従事者はもちろんのこと、経営層にも広くご一読をお勧めする。