18世紀の第一次産業革命からビジネスとテクノロジーは強い結びつきを持っている。当初は製造業や交通インフラなどの限定された活用であったが、時代を重ねるごとにテクノロジーの進化は加速し続け、現代ではあらゆるビジネスから日常生活にいたるまでその活用範囲は広がっている。

 

今日の予想外の世界情勢の変化は、世界中の人々の行動に制限と公共責任を課している。ビジネスも同様にオフィスワークからテレワークへの移行が進み、業界問わずテクノロジーの重要度は増しており、もはやビジネスと同体化しつつあるといえる。デジタルトランスフォーメーション(DX)が各所で推奨されるようになり、デジタルテクノロジーと改革はセットで広く認知されるようになって久しいが、取り組みの熱量は企業組織によって大きく差が見られる。企業改革や業務改革の具体例としてCRM、BI、MAなどツールの導入が散見されるが、ややミクロ的な視点をもって展開されているようにも思われる。

 

ときに顕在化した課題において適所に配置されたツールはビジネスに大きな変革をもたらすだろう。しかしながらビジネスを構成する実業務は様々な要因を含み決して平滑ではなく、すべての組織が単にCRM、BI、MAなどのツールを導入して生産性向上が叶うほど全能性は持ち合わせてはいない。先の見えない変化の時代にビジネスを展開し続けるには、ビジネス全体を見渡すマクロ視点での変革に重きを置くべきだろう。ツールを軸とした変革ではなく、自動化を主軸とした変革に、時代に翻弄されない力強いビジネス意義が見出されるのではないだろうか?

 

本書は、プロセスの自動化におけるローコード開発について解説する。前述の通り、オフィスワーカーの主戦場は社内からテレワークへと変化してきている。テレワークに伴い、業務効率、生産性から顧客とのつながりまで、様々な課題を抱える組織も散見される。環境変化が新たな課題が生じたかに見えるが、課題は以前よりオフィス内で実行されていた非合理なプロセスに潜在していたにすぎない。潜在する課題はコミュニケーションや従業員の負荷によって覆い隠されてきたのだ。本書では、自動化を軸としたビジネス改革を進める上での組織姿勢を予備知識や具体的な問題と解決を併せて展開し、ローコード開発による現場主体の俊敏性のメリットを解説する。改善の一例に「ページの最上部に重要な情報を表示し、画面をスクロールしなくても必要な情報を探せるようにすれば、ユーザーエクスペリエンス(UX)が改善します」と示されるように、小さな改善を迅速に行うことで生産性は向上し、課題を潜在化させることなく企業全体を変革できる。ビジネスへの関わりを重視し、テクニカル面に寄りすぎることなく、わかりやすく非常に好感がもてる内容となっているので、本書のご一読を広くおすすめする。