産業革命に代表されるように、時代とともに新たな価値が生み出され、あらゆる物事が改革されてきた。そして変化に呼応してビジネスも変容し続けている。オフィスワーカーの通信手段がFAXからメールに置き換わったように、常に効率化の追求と改善の歴史であるともいえる。

現代はあらゆる業界でデータが価値を持ち、データをいかに活用し、迅速な意思決定に貢献させるかが企業競争力の源ともなってきている。デジタルトランスフォーメーションが各所で提唱されるのも至極当然の流れといえるだろう。企業内の実業務すべてにデータが関与し、蓄積されるデータ量も膨大となり、収集や分析にも迅速さもを求められる。また、デジタルとビジネスの密着度が高まり続けることからも、データの有無にかかわらず業務全般はほぼデジタルが介在することになってきている。BIツールなどデータ収集から意思決定までに特化した各種ツールの発展もめざましいが、ビジネス進化の歴史にのっとるならば、局所的ではなく企業すべての業務の効率化があるべき姿といえるのではないだろうか? そのため、属人性を排除し、広範囲に自動化を促進できるRPAの活用が有効といえる。多くの企業で展開され、企業成長のカギと捉える経営層も増えており、今やRPAは成長期に入ってきたといえる。

本書は、独立系技術マーケティング調査会社ETRが行った企業調査に基づき、RPAに関する企業の取り組みについてレポートする。RPA導入から活用フェイズに移行する企業が相次ぐ中で、本書は企業内の活用部門数、RPA適用業務や現在の取り組みへの事実確認のみならず、「次の12カ月」と言う未来軸での質問項目を加え、企業の自動化戦略の傾向と熱量を分析する。「次の1カ月」では優先事項、支出、費用対効果(ROI)の傾向やボットの展開数への拡大意欲などを明記し、展開への障壁としてスキル不足を指摘する。また、抽出されるRPA導入にこなれた企業(トップ顧客)では、将来的に90%の従業員が自動化の恩恵を享受できると考えており、スキル不足への対策もさまざまな方法で実行される。特にRPAトレーニング受講への広がりは著しいものとなっている。今後、企業内のRPA活用は常態化していくことだろう。企業競争力にも結びつく効率化のためにも、活用の深さだけではなく、広さも重要となってくる。企業組織の実行は戦略をなくしては何も得ることはない。本書をご一読いただき、自社のRPA戦略を精緻にし、速度を高める契機としての活用をおすすめする。