データは価値を持ちビジネスを加速させる。近年では言い尽くされた感のある表現ではあるが、ビジネスとデータの関係の高い密接度を示しており、よく目にすることからも業種問わずに広く伝播している証左といえる。またデータとビジネスを連携できない企業組織の競争力は低下することをも意味する。

 

今日、事業規模や資本の多寡にとらわれず、多くの企業がデータ活用に積極性を発揮しており、文字通りデータ時代を拓く契機はなんといってもクラウドの登場だ。とりわけパブリッククラウドの発展は著しく、マルチクラウド・ハイブリッドクラウド採用企業も特出した存在ではなくなり、活用方法や新たなサービスはいまでも創出され続けている。データ活用の素地は整っており、誰もがビジネスに参戦できる状況にあるといえるが、ヒートアップしたパブリッククラウド一択主義は温度を下げつつある。クラウド活用が成熟期へと向かう現時点では、トップランナー企業の中にはデータ管理という存立基盤に再注目する動きも出てきており、オンプレミスへ回帰する大胆な具体事例も報告される。汎用性、可用性も高くコストバランスにも優れるクラウド文化に背を向け、時代に逆行するようにも見えてしまう。しかし決してデータとビジネスの連鎖を断ち切ったわけでもなく、むしろ活用には格段の才覚をふるっている。さて、トップランナー企業群の視線の先に拡がるデータ活用とデータ管理の情景はいかなるものだろうか?

 

本書は、クラウドサービス活用とデータ管理の実状について、データストレージを世界各国でビジネス展開するINFINIDAT社 国内セールスマネージャー蔵園修一氏へのインタビューを収録する。クラウドとストレージはビジネス的に相反するかに思われがちだが、同社はクラウドプロバイダにもストレージを供給しており、一般企業とクラウドサービス双方の事情に精通する企業だ。データ時代を迎え、データ量は増加の一途を突き進んでいることからもストレージの重要度も減ることはない。そのような市場動向を踏まえ、同氏は「クラウドプロバイダに委ねすぎていないだろうか?」と指摘するとともに、企業が留意すべきこれからのデータ管理のポイントを3つにしぼり簡潔に解説展開する。具体的項目は本文でぜひともご確認いただきたいが、ビジネスを展開する上で利益と企業責任は確保・追求すべきであり、データとビジネスの連鎖は太く確実なことが好ましいことからも、企業にとって真に有用な課題を提起する内容となっており、前出のトップランナー企業群のクラウド活用転換にも真意が見えてくる。ぜひご一読いただきたい。