テクノロジーは前進を常とし、技術に軸足を置く大多数の市場では“最新が最善”として受け入れられている。モバイルデバイスの進化がそうであるように、10年前のガラケーにだれも見向きしないだろう。一方、芸術的領域などは“使える/使えない”の範疇を超えた希少さという価値も存在している。

 

あたかも消費社会はヴィンテージと最新の二元論でなり立っているかのように思われる。しかしビジネスや工業では“枯れた技術”と言う概念も存在する。枯れたというコトバの響きから、古臭く終わっているような“使えない”という誤解を招きやすいが、真意は「使い尽くされた技術」であることを強調したい。使い尽くされているということは、基礎技術にまつわる長所と短所が充分に蓄積され、トラブルへの対処法や短所を補完する周辺技術の成熟を意味する。モバイルネットワークが発達した今日でも、船舶や災害時の通信手段として無線通信が未だ廃れないのと同様に、極限の環境下では“枯れた技術”で信頼性を担保している。

 

ビジネスも同様に機能停止は、利益の目減りだけでなく企業の信頼も大きく損ねる。企業活動全域の信頼と効率のバランスは注視すべきではないだろか。本書「メールマーケティングハンドブック」ではマーケティング活動としてのEメールにスポットを当てる。本書では、基礎概念から法律と罰則、マーケティングオートメーションと比較や配信システム選び、効果測定など、メールマーケティング実施におけるメリット/デメリットを的確に指摘し、簡潔に取りまとめた内容となっている。メールマーケティングはあまりにも日常的な活動なために誤解や非効率が潜在しやすく惰性的な運用にも陥りやすい。基礎呼吸の正しさが高パフォーマンスの根源であるように、本書をご一読いただき“枯れた技術”に目を向け、自社のメールマーケティングを再点検されることをおすすめする。