企業にとって成功と成長は、どちらも企業組織の存在意義であり、継続性が伴わなくてはならない。取引数、社内で設定した目標に対する達成度、マーケットシェア、決算報告での前年比較など、企業組織によって目する成功と成長の尺度は異なるが、組織だった明確な方向性と、共通の目的認識を土台とする日々の業務の連続によって実現される。

 

市況は元来平滑ではなく、グローバル経済の発展によって多項が繋がり、影響し合う複雑さがさらに加わり、カオス理論におけるバタフライ効果のような予測困難性を持つ。そして経営層が状況を把握し迅速に方向性を明文化するにも難度は高い。故に業種業界・事業規模に関わらず、ビジネスをうまく「巡航」させるにはマーケターの存在は欠かせない。かつてのマーケターは知見を武器に企業の方向性を指し示していたが、現代ではデータと知見をもってあらゆる業務を緻密に改善する。またデータドリブン経営に象徴されるとおり、デジタルファーストの時代に重用されるマーケターは企業文化を根底から変革・促進する才覚をも発揮する。

 

本書「第3版 マーケティングインテリジェンスレポート」は、Salesforceによるマーケティング部門の意思決定者を対象にした調査を開示する。2021年12月16~2022年1月14日期間で2,583人17ヶ国に対し、オンラインアンケート、電話インタビュー(一部地域)実施されており、最新の調査内容となる。本書ではアンケートより現代のマーケターの使命を「成長促進」と「顧客体験推進」と提起し、企業組織の実態、マーケターの取り組みからマインドに至るまで、デジタルファースト時代の現実を詳らかにする。さらに、後半では17の国別、17の業種別でのレポートが展開され、あらゆる業種の傾向を簡潔にしめす。巷には海外の回答者のみや海外回答者の比率の高い調査報告が散見されるが、本書は「調査回答者の内訳」も添付し、日本を含む17国の調査回答者数の比率は等しいことを証明する。自社の成功と成長に繋ぐ具体的な行動のためにも、ビジネスパーソン必読の一冊といえるだろう。