近年の社会を俯瞰すると、コロナ禍で起きたマスク不足、産業を停滞させる半導体不足、電力危機など、需要と供給に起因する課題が浮き彫りになってくる。半導体が3工程(設計・前工程・後工程)を分業するように、あらゆる産業は自社完結することは少なく、多くのプレーヤーによって構成されるサプライチェーンで成立している。

 

ジャストインタイム生産システムが顕著な例だが、物流が産業のカギを握り、エンドユーザーに供給する社会の動脈となっている。早期に物流の課題に着目した米国Amazon社が10年ほど前にドローンによる配送を発表し、その構想は世界中の注目を集め、空輸ドローンの可能性を拡大させた。当時は絵空事と捉える向きも散見されたが、2022年6月14日に「AmazonでAmazon Prime Air」として米国一部地域で今年の後半に導入すると発表した。研究開発ばかりでなく地元当局と連邦航空局(FAA)との連携・法整備あってのサービスインとなり、イノベーションが実現されるに違いない。一方で日本国内のドローン活用の動向はどのような状況だろうか? 国土交通省では2022年12月に航空法改正の施行が予定され、ドローンに関する新制度が導入される。

 

本書ドローンジャーナル特別編集号では「航空法改正の全容と解説」と題し、国土交通省への独自取材を主軸に新制度を解説しながら、市場展望、登録制度や手続き、交通インフラへの現実と未来展望など充実の内容で展開する。航空法改正の最大のトピックは「レベル4」と定義される有人地帯での目視外飛行となる。機体認証、操縦ライセンス(国家資格)など明確かつ厳格に安全を担保する法整備が行われる。当然、ドローン活用拡大が期待され、本書では2021年~2027年の国内市場の予測を掲載し、2027年には約8,000億円市場と見積もる。また、用途として広く認知される「空撮」は2021年実績では市場全体の3.4%にすぎず、すでに多分野でのドローン活用を示している。後半では「空飛ぶクルマ」の新市場についても分析する。航空法改正を契機に、あらゆる産業から将来の交通インフラに至るまで上空活用が活性化していくだろう。今回の法改正は規制ではなくルール整備にあることから、ビジネス発展とイノベーションが期待される。空撮と物流だけではないドローンの“今”を本書より是非ともご確認いただきたい。