“データは価値を持ちビジネスを躍進させる”は、今日のデータドリブンな企業のありかたを表す常套句だろう。あらゆるシーンでデータを収集・蓄積し、データに基づき判断・アクションに繋げることは、まごうことなきビジネスの正道といえよう。

 

しかし判断・アクションと簡単にいうものの、現実ではデータを見れば、誰もが最適解にたどり着き、即座にアクションを起こせるほど単純ではない。 特に広告関連は効果測定技術の向上によって、企業内外で取得されるデータの種類・質ともに膨大で複雑になっている。決裁権者やマーケターが判断する思考過程において、データをどのように活用するか、 つまりは付き合い方が課題となってくるのではないだろうか。

 

本書ではTVCMやクリエイティブ制作にスポットを当て、最前線で活濯するクリエイティブディレクターの篠原誠氏、マーケティングコンサルタントの松田康利氏、脳波データを活用したTVCMクリエイティブの効果検証サービスを提供するサイカの平尾喜昭氏によるTVCMの現状とデータ活用についての対談を収録している。「ほとんどの人はTVを見ないはず」と言うバイアスも一定存在するが、実際のデータではTVは見られ、TVCMは短期的な売上への貢献だけではなく、長期的なブランド・エクイティ効果を生み出している実績もある。視聴率だけではなく、今日ではより精緻で多項に渡るデータが活用されているが、データばかりが先行すると結果的にデータに振り回されてしまう危険もある。本書では、膨大なデータを選び読み解く力の重要性について言及するとともに、データ活用の具体的なアプローチ方法についても解説される。TVCMだけでなく、マーケティングにおけるデータサイエンスの進化を知り、トップランナーならではのデータとの付き合い方が開示される希有な内容となっており、あらゆるデータと向き合うビジネスパーソンこそご一読をおすすめする。