企業組織の内部にはあらゆるルールが存在し、社員はルールに則ることで日々の業務が遂行される。社内教育を徹底し、社員の知見を標準化することによって、ルールから逸脱することなく疑問や課題に対処できる素地を養ってきた。

 

しかし社会は常に変化しており、社内の業務は画一的な物事を扱うことの方が稀といえる。たとえ研修を充実させ、迅速なルールの変更を告知しようとも、社員一人ひとりが業務で湧き起こる多種多様な疑問をすべて払拭することはかなわない。疑問を抱えたままに業務を進めれば、重大なコンプライアンス違反を引き起こす可能性もある。故に疑問を担当部署に問い合わせることで解決させる機能が企業には備わっていなければならない。また特に近年コロナ禍によって急増したテレワーク実施は、IT関連のサポートが業務遂行を左右し、殺到する問い合わせによってバックオフィス部門の業務を圧迫する傾向にある。同種の問い合わせが多数寄せられ、バックオフィス部門が疲弊する状況は、現代企業の命題でもある生産性向上・業務効率化とは大きく乖離する。

 

本書は、人材サービス大手であるマンパワーグループ株式会社のITサービスマネジメントツール導入事例である。同社は近年の働き方改革に伴う労働関連の頻繁な法令改正に事業活動を対応させる必要があり、全国の営業拠点から寄せられる電話での問い合わせに管理本部の各部署は日々忙殺されていた。この課題に解消すべく、疑問に対してサポートする側とサポートされる側双方の社員の利便性に着目し、社内オペレーションの定着を重要視した。比較検討を経て2018年よりServiceDesk Plusを7部門で運用を開始する。機能を積極的に活用し、問い合わせ内容によってサービスデスクを分けて管理するなど運用方法にも工夫をこらす。社員のセルフトレーニング環境を整備するなど、きめ細かな施策はツール運用の参考にしていただきたいポイントだ。生産性向上・業務効率化は、単にツールを導入すれば実現されるものではない。本書は、確固たる目的意識と最適なツールが織り成す企業DXのあるべき姿を示す内容といえるだろう。