“IT基盤の強化が企業力の強化”と言われるほど、企業とIT、さらにはその先にあるビジネスとの結びつきは年々高まっている。この潮流は拡大する傾向をともない、日常生活を含む社会全体に合流したデジタル化、つまりはDXへと向かう大きな流れを生み出している。

業種を問わず世界中の企業組織では、IT部門が先頭に立って多様に変化する市場ニーズや業務効率化への施策に奔走していることだろう。近年のトピックでは企業のクラウド活用やハイブリッドワークなどに対応したテクノロジー進化は凄まじく、付随するサービスも多く創出させている。それらを上手く組み合わせビジネスをドライブさせることで企業は利益を得て成長が維持される。経営視点からはデジタルへの投資判断が重要となり、IT部門は実行と構築ばかりでなく、ITトレンドをキャッチアップし精査した情報を経営層に進言するブレーン的役割をも担っている。IT部門の能力が内にも外にも及ぶことから、IT部門は現代企業における大動脈ともいえる存在ではないだろうか。

IT部門の能力の向上・強化が重要だが、潤沢なデジタル投資予算や高度なITインフラを所有すれば叶うというわけではない。やはり“人”の存在によって部門組織は成立している。本書「デジタル人材育成~いま、企業がなすべき持続的成長へのアクション~」は、『IT Leaders』と『DIGITAL X』よりデジタル人材に関する記事を抜粋・再編集した特別編集号となる。『人材戦略先進企業に学ぶ、10~20年先を見据えた「DXの源泉」』をサブテーマに掲げ、企業の取り組み、採用、育成、DX人材像、経営トップ役割など6つの視点・切り口で事例・調査データに基づきデジタル人材の記事を展開する。いずれもデジタル人材によせる期待を顕し、今後枯渇する人材と育成の難しさを示す。また一人の有能さに依存する属人化とは異なり、あくまで組織力としての“人”の重要性にフォーカスした未来志向の内容となっている。時を経れば物も技術も陳腐化するが、環境が揃えば“人”は成熟し最新デジタルに対応していくことで企業は成長を続けるだろう。経営層を含め、デジタルに優位性を見いだす企業人必読の書として、本書のご一読を推奨する。