デジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流は、企業体のみならずあらゆる領域に広がってきた。当初のDXの定義は「情報技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」とあるように、社会全体で起こるべき動向といえる。
多くの企業では生産性向上と効率化、究極的には経営資源の有効活用を目指して、デジタル化を推進している。当然、業務の負荷軽減も必須だ。今日、働く場所を問わないハイブリッドワークが標準化しつつあり、社内書類のやり取りもメールや各種デジタルツールによって成立しており、紙を根拠とすることが減少している。この流れを受け、国税関連の帳票においても1998年より電子帳簿保存法が施行され、同法はITの時代進化と企業のIT活用の深度に合わせ、数回の改正が実施されてきた。
2022年1月に大幅な改正が施行されており、本書では現行の電子帳簿保存法について解説する。現行法では税務署長の事前承認制度の廃止という条件緩和が最大のトピックとなるが、対象となる書類の範囲や具体的な保存方法など、官報から誰もが読み取って理解するのは難しい。本書では「基礎編」「実践編」の2部構成で整理し、改正前/改正後の違いを含め、図版を用いわかりやすく平素な言葉で仕組みを構造的に理解できる内容となっている。電子帳簿は紙ベースの書類保存に比べコストも業務負荷も低減されるが、取り扱いを誤れば罰則の対象となることから、法令遵守の上に成立する企業組織が押さえておくべき項目といえる。基礎知識ゼロから無理なく学べる本書は経理部門ばかりでなく、企業のDX推進に携わるメンバーにも是非ご一読をおすすめする。