ビジネスで競争力を維持するには、常にトレンドを把握し洞察する必要がある。市場の変化や顧客ニーズの変化に敏感に反応し、最新のトレンドを取り入れることは、競争上の優位性へとつながる。企業組織であれば、ビジネスの主戦場となる業界や競合他社を注視しがちだが、今日のあらゆるビジネスに欠かせないデジタル領域については、変化・進歩も著しく、業界はおろか国をも超越した大局観をもってトレンドを把握すべきだろう。

 

国内ではデジタルトランスフォーメーションの流れを汲み、2021年にデジタル庁の設立など、政府としてもデジタル領域への取り組みが顕著になってきた。それ以前から民間企業では、より敏感にクラウド活用を筆頭としたデジタルイノベーションの取り組みに着手している。サービスの充実に依るところもあるが、やはりトレンドに反応した需要の高まりを反映した現象といえるだろう。一方、トレンドの発信源とも言える米国では、連邦政府が2010年に「Cloud First戦略」が採用され、政府機関がクラウドコンピューティングを最初の選択肢として検討することを奨励し、効率性やコスト削減、イノベーションの促進など、多くのメリットを享受することで民間へと伝播されてきた。

 

さらに、米国連邦政府では2019年に公共部門や民間部門における成功例に基づいた情報や推奨事項を各機関に提供する「Cloud Smart戦略」へと深化を遂げている。本書「公共部門におけるAPIの2022年の状況」は「Cloud Smart戦略」に基づく今日のトレンドを捉えるべく、1,500人以上の職員を有する米国公共部門組織のITリーダーを対象にGoogle Cloudが調査を行い、データ数値とトレンドを分析・解説する。常識となったクラウドは、ハイブリッドクラウド、マルチクラウドを展開するケースもめずらしいことではない。しかしデジタルトランスフォーメーションには課題も多く、未だ進行形に在る。本書ではクラウド環境における、システムの統合、パートナーシップの拡大、自動化と効率化、イノベーションの促進など多くの利点をもたらすAPIに着目し、API戦略の重要性と本質を繙く。官と民、国内と海外といったように、読者諸氏が対峙する状況とは異なるが、APIを軸とする時代の潮流は既に始まっており、押さえるべきポイントと言えるだろう。本書のご一読を強くおすすめする。