現在ではあまたの企業がITを駆使した各種サービスを社内外に向けて展開している。近年需要が急拡大したリモートワークを含め、社内向けのサービスが滞れば業務は停滞し、社外向けのサービスが滞れば利益を失う。

 

特に社外に向けたサービスは、直接的な利益を生み出すECや課金を伴うものは言うにおよばず、サービスの停止はビジネスにとって深刻な影響をもたらす可能性がある。サービスが停止する要因は多岐におよぶが、自然災害、サイバー攻撃の外因やサーバー障害、容量不足・負担過多、人為的エラーなど内部からもたらされる因子も多い。また近年のクラウドシフトの潮流から、企業の情報インフラはより素早くダイナミックに変革され、管理すべき項目は増加の一途を辿っている。

 

サービスを阻害する障害を回避するために、サーバー監視は前提として実践されているだろう。本書はベネッセホールディングスが実践する先進的なサーバー監視について、関係者へのインタビュー形式でレポートする。幅広いカテゴリでサービスを展開する同社はサーバー監視を実践してきたが、元々利用していた監視ツールでは障害を検知できず、「サービスが使えない」と訴える顧客からの電話を受けて初めてサービス停止状況を認識するという苦い経験をした。これを機にサーバー死活だけの監視から、“予兆を早期に発見する”監視を摸索し「育てる監視」をコンセプトとする新たな監視へとシフトした。この刷新においては技術的な課題だけでなく、組織の壁や文化など目に見えない課題も立ちはだかるが、検証過程を経て要件に見合う監視サービスと出会うことで「育てる監視」を実現しつつある。本書は、従来型のサーバー監視に課題を提示し、導入から企業全体への展開、システムの運用品質向上実現へのヒント が随所に展開される内容となっている。「育てる監視」の結果が「予兆検知」に繋がることを、本書で是非ご一読の上ご確認いただきたい。