ビジネスにITが有用なことは世界中のビジネスパーソンに理解されている。報道などで新たなITが紹介されれば気にかけ、IT関連業界でなくとも特にデジタルテクノロジーの動向は無視することはできないだろう。今やデジタル技術とビジネスは広く深く絡み合い企業を前進させる核となっており、最新のテクノロジーを適確に捉え自社ビジネスに反映させることは企業経営の重要事項といえる。
生成AIに関する話題は引き続き多く、コンテンツの生成、パターン認識、データ分析などあらゆる分野で幅広くビジネスに実用されはじめている。一方で“ディープフェイク”と称されるAI生成の偽造動画や音声も随所で噴出し、モデルの悪用も目立ち日本国内でも安全性確保に向けた法整備の検討が進行している。現代のビジネスでは最新のデジタルの浸透は素早く、先進的な組織はビジネスへの転用に長けており、ライバルに先んずる優位性の源泉でもある。同時に法や規則に縛られない“攻撃者”もテクノロジーに対する取り組みは恐ろしく素早い。今日の生成AIの高まりを鑑みれば、サイバー攻撃への技術悪用による更なる凶悪化は必至であり、今後は総ての企業組織が“悪の生成AI”と対峙することとなるだろう。
本書「2024年 セキュリティの現状」はサブタイトルに「競争が激化するAIの活用」と題し、トレンドである生成AIを軸にサイバーセキュリティの現状をアンケート調査に基づき分析・解説するとともに将来への展望をも示唆する。全8章で構成される本書の一部を抜粋すると、常に困難と直面するセキュリティチームは意外にも41%が「対策が以前よりも楽になった」と回答しており、ソフトウェアエンジニアチームの連携を筆頭とする体制の成熟も見られ、また半数近くが「AIへの取り組みを重視」と解答しておりAIに寄せる効率化・高度化への期待が示される。本書では多角的に丁寧に整理し「業界別の特徴」「国別の特徴」と主要なインサイトを紹介している。生成AIのムーブメントは既に広く波及しており、今年のセキュリティ動向を適確に捉える充実の内容となっている。