過去10年、eコマースはソーシャルコマースの台頭、グローバルサプライチェーンの混乱、マクロ経済の変動、そしてAI革命と、立て続けに前提の書き換えを迫られてきた。近年では、AIエージェントが消費者に代わって検索・比較・購入までを担う「エージェンティックコマース」が、購買のあり方そのものを根本から変えようとしている。
この大きな変化を受けて、従来型のeコマースモデルは厳しい局面を迎えている。在庫を抱えて品揃えを広げる構造では、売上を伸ばすほど在庫リスクと利益率の圧迫が重くのしかかる。加えて、米国EC市場の40%をAmazonが占め、Walmartも拡大を続けており、同じ土壌で他社と競い続けるかぎり、顧客接点と価格の主導権は自社の手から離れていきがちとなっている。マーケットプレイスが世界のeコマース市場に占める割合は10年前の40%から67%へと拡大しており、Lowe's(米:住宅リフォーム・生活家電チェーン)やBest Buy(米:家電量販店)といった大手も2024年に相次いで参入している。
本書「エージェンティックコマース時代にマーケットプレイスとドロップシップが選ばれる理由」は、Miraklのプラットフォームでマーケットプレイスまたはドロップシップを2年以上運用してきた小売事業者153社の実績を分析した年次レポートである。これらの企業群は、世界のeコマース平均を大きく上回る成長を記録している。本書では、成長スピードとプラットフォームの拡張効率の高さに着目し、現象と企業の選択をデータに基づき分析する。在庫リスクを負わずに品揃えを広げる仕組み、AIエージェントに選ばれるためのデータ品質と統合設計、リテールメディアを第二の収益柱に育てる道筋など、小売事業者にとって新たな戦略の起点となるテーマで展開する。
加えてDecathlon(仏:スポーツ用品会社)、Nordstrom(米:百貨店チェーン)といった世界の先行企業が、どれくらいの規模から始めたのか、その意思決定と実行のフローについても、具体的に言及する。eコマースにおける世界の潮流は確実に変化しており、国内企業が現状は維持出来ていても、やがて変化の波は日本の市場にも押し寄せ、自社ECに固執する時代は終わるだろう。小売業の経営層、eコマースのビジネスリーダーには本書のご一読を強く推奨するとともに“自社はいま何を着手すべきか”の判断材料として、ぜひともご活用いただきたい。
