ビジネスとデジタルは渾然一体となり、今日もまた市場には新しいサービスが生まれている。各社がしのぎを削る状況下、顧客はサービスにますます期待を寄せるようになり、評価する目も厳しさを増す。一方で社内に目を向ければ、より有効な手を打つには実情把握が不可欠であり、各種の業務システムやデータは生命線。すなわち、対顧客、対従業員を問わず、ITインフラやアプリケーションなどに障害が生じた際の影響は甚大であり、IT部門のプレッシャーは高まるばかりだ。

 

前線のニーズを満たすITサービスをいかに安定的かつ効率的に提供し、競争力向上につなげていくか──。その文脈で、重要性が声高に叫ばれているのがITSM(ITサービスマネジメント)。目的に準じたサービスの設計-提供-管理-改善を、一貫性をもって実践する取り組みのことである。本書は、そのITSMについて、最新で実効性のあるアプローチを詳しく解説したものだ。

 

実務に関わったことがあれば、専用ツールを導入すれば解決する、あるいは、ITIL(Information Technology Infrastructure Library)のようなベストプラクティスを読み込めば対応できるといった短絡的な図式が当てはまらないことを肌身で感じていることだろう。本書でも「チームが仕事を成し遂げるために必要な文化や慣習も含まれる」と指摘しているように、ある時には従来からの通念にとらわれずに、新たな発想と常識をもって臨む必要がある。テックトレンドを見極めつつ、柔軟かつ貪欲な姿勢で効果を上げている先駆者がどのように取り組んでいるかが分かる中身の濃い一冊だ。