ビジネスを進める上での「書類」は、契約書、発注書、請求書、履歴書、給与明細書……内外用途に限らず挙げれば際限がない。業種業界を問わず「ビジネス=書類天国」であるともいえる。一昔前のオフィス環境であれば、紙書類をカギのかかる「しかるべき書棚」に保管し、カギを「しかるべき人」が管理すれば済む話であったが、PCの普及が紙からPCで扱えるドキュメントファイルの時代へと変化させた。しかもインターネットというイノベーションが加わり、「しかるべき書棚」のような物理的・空間的保管場所は職場から消滅しつつある。

今日ではドキュメントがビジネスの中心でもあり、PCへの依存度も高い。まさに「ビジネス=書類天国(紙)」から「ビジネス=書類天国(ドキュメント)」への転換と言えよう。Excelファイルの1つが外部流出し、内容が顧客の個人情報データであれば、積み上げてきた企業の信頼を一瞬にして吹き飛ばせる破壊力を発揮する。ドキュメントは企業の生命線でもあり、守るべき財産でもあるので、保管場所だけでなく、BCP(事業継続性)も踏まえた管理運用が肝要といえる。

本書は、企業内での安直なNASの運用に警鐘を鳴らすともに、ソリューションによるファイルサーバーの運用管理を提言する。経営資源の潤沢な大規模事業所であれば管理・運用・使い勝手向上に十分な投資も可能だが、100名以下の支社などは精緻な運用もむずかしく、専任スタッフを配置するのも現実的ではない。本書で展開されるソリューションでは、NASの管理だけでなく、クラウドストレージとの連携、ユーザーPCの差分バックアップ、トレーサビリティー(履歴情報管理)など多項に効力を発揮する。物理的な「しかるべき書棚」は消えたが、ソリューションによって今日的な「しかるべき書棚」以上の物を低コストで得ることができるのではないだろうか? 危機管理意識を高め、企業力向上に役立つ内容となっているので、ぜひご一読をおすすめする。