企業にとってITインフラ基盤の重要性は日々増している。影響範囲は業務効率だけでなく、ビジネスの根幹である成長・競争力にも拡大している。強化はすべての企業が求むものの、コストや人員を含めた実運用とのバランスを考慮すると、軽々と進められる問題ではない。
クラウドの出現は近年最大のトピックであり、読者諸氏もご承知の通り、多くの企業にITインフラ基盤強化の門戸を開いている。クラウド活用を実践していくなか、導入企業からは運用やコスト面での課題を訴える声も聞こえてきている。一方でオンプレミスの仮想化も着実に深化と浸透を高め、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)は省スペース、台数削減、運用管理負荷の大幅軽減を実現する。しかし、安くなったとはいえライセンスのコストのハードルは高い。またHyper-Vベースに対応するHCIの選択肢は少ない現実もある。ハイブリッドクラウドに時代は進みつつも、可用性や事業継続性を考慮したDR(ディザスタリカバリ)等も盛り込むとなると、予算潤沢なひと握りの企業だけが実践できるように見えてしまうので、新たなイノベーションが切望される。
本書は、ITインフラ基盤強化におけるMicrosoft Azure Stack HCI(以下:Azure Stack HCI)を解説する。登場以来注目されるAzure Stack HCIであるが、メリットは感じつつも自社への導入イメージがつかない読者は多いのではないだろうか? そこで本書では、SIerであるJBCC社視点から企業における具体的なメリットを整理し、わかりやすく展開する。未来を見据えた基盤強化を求めるとコストがかさみ、コストを重視すれば性能・使い勝手・可用性は劣る。特に中小規模の企業では理想と現実の問題から現状維持と停滞を繰り返すケースも多い。しかしAzure Stack HCIは低価格のみならず、Hyper-VでのHCI親和性は当然高くその他のライセンスコスト低減や可用性/拡張性も兼ね備え、事業継続のためのクラウドDRによるコスト圧縮も容易とする。システム設計概念であるSoE(System of Engagement)はオンプレミスのエッジへの対応が不可欠であり、時代はハイブリッドクラウドへと確実に進んでいる。クラウド連携を重視した設計思想を持つAzure Stack HCIは来たるべきクラウド活用の枢軸として期待されているので、SE諸氏はもとより、コストバランスに悩める経営層にもぜひともご一読を推す内容となっている。