企業のIT基盤・インフラの強化刷新は、生産性を高める重要課題として、今日ではデジタルトランスフォーメーション(以下:DX)の“大号令”とともに広く認知されている。そして競争力の維持とポジションの安定を求めるがゆえに、DXを火急の課題と捉える企業は少なくない。
2004年DX発祥時、「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させる」という概念が提唱された。DXは「テクニカル」な領域で捉えられる傾向が強いが、「テクニカル」はあくまで“手段”であって“目的”ではない。コストと時間をかけ、社内でIT強化を推進しただけでは、DXは達成されない。2018年経済産業省が「DXレポート」で日本企業のDXへの対応を遅らせている要因として、複雑化した既存システムであると警鐘を鳴らしている。本来の目的はデジタル技術により、業務の生産性を高め、企業活動を推進させ、人々の暮らしをより豊かにするところにある。
本書は、国内スナック菓子市場でトップを走り続けるカルビー株式会社(以下:カルビー)がDXに取り組んだ導入事例をレポートする。同社では生産性の向上を目指し、20年前に導入したグループウェアを刷新。数々の業務アプリを検討する中で選定の条件の1つは「スケーラビリティ」であった。また、ロケーションに囚われない業務を支援する「働き方改革」をも実現した。選定に至るまで膨大な時間を費やす企業も多いなか、文中で語られる関係者の言葉には全く“ブレ”は見当たらない。そこには同社の目指す「社員を元気にするIT」という確固たるコンセプトが根底にある。まさにDXの本流を体現している事例であり、トップランナー企業ならではの“神髄”に触れられる内容となっている。すべての企業人にご一読をお勧めする。