2020年全体を振り返れば、誰も予想しえない急激な変化と停滞に世界が翻弄された激流の年であった。未だ予断を許さず、物理的な移動が制限される傾向は続くが、ビジネスにおいては停滞は断じて許容されない。時流を読み、変化に絶えず適応していくことが時代を超越したビジネスの本質といえる。そしてデジタル・テクノロジーは進化を続け、ビジネスとデータの結びつきを日々強めている。
近年ではクラウド活用がビジネスを左右すると、重要性が強調される傾向にあるが、あくまでビジネスにおけるデータ活用の一角に過ぎず、クラウドか否かという二元論的な話ではない。ビッグデータをビジネスプロセスに体系的に組み込み、ビジネスはますますデータ主導型になってきている。規模の経済と経営資源の独自性を有する各業界のリーダー企業は「クラウドファースト」戦略から「データファースト」戦略に移行が進み、DX(デジタルトランスフォーメーション)の潮流は進化し続ける膨大なデータに対処を必要とし、自動化された方法でデータ主導型の人工知能の活用は必然となってきている。アーキテクチャにおいてはコストや効率も踏まえ、クラウド活用に固執することなく従来型エンタープライズ、オンプレミスプラットフォーム、さらにエッジも含め、データの所在にとらわれないダイナミックな方向に歩を進めている。
本書は、デル・テクノロジーズによる2020年サーバー動向および所見をレポートしたものだ。デル・テクノロジーズのエキスパートがお客様や業界リーダーと接する中、際立った12の動向を解説・分析し2021年への展望を年次版としてまとめる。2019年の2020年予測では「データが導く次の10年」と発表され、2020年は始動の初年度に位置していた。2020年は激流の年であったが、本書ではビジネスにおけるデジタル・テクノロジーは予測に即した推移を示しており、AIチップの波、新たなプライバシー法整備による安全性と透明性、IoTと5Gでのデータ処理基板など、多角的な視点から精緻な分析と所見を展開する。巷では言葉先行の傾向にあるAI技術においても、機械学習(ML)、ディープ ラーニング(DL)、人工知能(AI)それぞれの役割を明確に解説されており、用語に振り回されることなく読み進められる充実した内容となっている。