ビジネスは顧客の存在がなくては成立しない。さらに近代のビジネスの主導権は、企業から顧客へと移り変わってきている。顧客は質の高いサービスとサポートを重視し、より自身のニーズに合わせてカスタマイズされたエンゲージメントを求めている。たとえ製造業であっても、製品そのものだけでなく、問い合わせ、納品、支払、サポート、などすべての顧客接点における体験が、企業やブランドへの信頼を形作るものとして変貌している。いまや業種業界を問わず、総合的な顧客体験の良し悪しにより企業が推し量られる時代なっており、カスタマーサービスが果たす役割はますます重要になってきているといえる。
本書は、2020年8月21日から9月26日にかけて、全世界33ヶ国の常勤カスタマーサービスプロフェッショナル7,095人を対象にSalesforceが調査した結果をまとめたレポートである。2020年前半より世界的に拡散した新型コロナウイルスにより、カスタマーサービスに寄せられる問い合わせは急増し、内容も複雑化する中、手探りでコロナ禍での業務に取り組むサービスプロフェッショナルたちの生の声を収録している。
コロナ禍は、カスタマーサービスにリモートワークや新たな安全手順の導入、デジタルチャネルへの移行といった変革を強制的にもたらすことになったが、予期せぬ新型コロナの猛威に対しては準備があったわけもなく、完全なリソースを確保できた組織は皆無であろう。
本調査における設問は、カスタマーサービス組織の内部的要素にもおよび、精緻な分析とSalesforceがTrailblazer(トレイルブレイザー:先駆者)と呼ぶデジタルトランスフォーメーション実践企業の成功事例を交えて展開する内容となっている。コロナ収束の兆しすら見えない状況下でカスタマーサービス業務に孤軍奮闘する読者諸氏も多いことと思われる。世界中にビジネスを止めまいと全力を傾ける同志がいる。自社カスタマーサービスの未来を摸索し充実させるためにも本書をご一読いただきたい。