エンタープライズプラットフォームのビジネスにおける重要度は、一昔前とは比較にならないほど高まっている。さらに事業規模を問わない裾野の広がりにも目を見張るものがある。背景には、物理的所有の概念を一新したクラウドの貢献が大きいだろう。
ITとデータの活用が進むほどに、エンタープライズ環境内のワークロードは増加し、データ量も膨大なものとなっている。同時に、動作の安定と安全は事業継続性、データ資産管理の観点からも企業の優先事項の上位に位置し、プラットフォームがオンプレミスかクラウドでどちらで動作していようとも、ディザスタリカバリ(DR)環境を正しく整備しなければならない。しかしDR環境の構築は本番環境とは別にインフラとサイトを用意する必要があり、コスト的な負荷は少なくない。また、データ同期の管理やDRイベント発生時のRTO(目標復旧時間)、RPO(目標復旧時点)の設定と実行性など、強く正しく運用するには組織としても多くの努力も要求される。
本書では、DRの課題を提起するとともに、Cloud Volumes ONTAPを俎上に載せ、コストバランスに優れるクラウドベースのDRの具体的なメリットを紹介する。昨今はハイブリッドクラウド、マルチクラウドといった活用も一般的であり、高度に複雑化する構造上にプラットフォームが成立することも珍しくはない。3大パブリッククラウドの各プロバイダが提供するネイティブサービスを使用して冗長性を確保する方法も本書では解説されるが、手動での開発・テストなどを要することから運用保守の煩雑さと高コスト化の可能性を指摘する。解決の方策として、Cloud Volumes ONTAPのメリットを5項に分類し具体的に展開する。今やDR環境を持たない企業組織は少ないかと思われるが、既存のDRに付加する形態であってもクラウドベースのDRを実現できれば、災害のみならず業務が滞る障害にも強みを発揮するだろう。ビジネスを強化する上でも、ご一読をおすすめできる有用な内容となっている。