大雑把な表現ではあるが、近年ほど企業改革が実践された時期はないだろう。労働力人口の減少傾向に伴う国際競争力低下など、未来を見据えた国家戦力として働き方改革と企業DXが叫ばれてきた。その一方で、現実の実行性については企業で大きな差違が生じてきている。

 

労働力と競争力に対する将来的な危機感は多くの企業が有するところではあるが、目下の業務が循環しているなか、投資以上に仕組みを大きく変えることへの難色が変革を鈍化させているように思われる。しかし2020年に始まったコロナパンデミックによって出社を業務の一環と捉える既存の概念は崩壊し、大多数が出社困難者になる事態となった。先の危機感が急激に足元に迫り、ビジネスを停滞させないためにも環境を急造してテレワークに切り替えている。皮肉にもコロナパンデミックが企業改革を前進させたかたちとなるが、何事においても予定なき急造にはほころびが生じやすい。特に企業の重要課題であるセキュリティについては潜在する問題も多い。いまだ予断は許さない状況下であるが、鎮静化の兆しが見られるし始めた今こそセキュリティの強化とポストコロナに向けた業務構造を構築するタイミングにある。

 

本書は、ポストコロナ時代におけるゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)とモバイルデバイスマネジメント(MDM)について解説する。企業セキュリティは社内業務を前提とした範疇で社内と社外の境界防壁を築くことで安全を担保されてきた。テレワークにはVPNで対処するにも限界があり、何よりも自宅の接続機器の安全性にも不安が潜在する。また業務に広く有用性を発揮するモバイルデバイスも多数支給され、倍増する数に、MDMもより重要になってきている。本書では、境界曖昧になるテレワークの環境の現状を分析するとともに、海外からiPhoneシェア率が異常に高いとも評される国内事情を鑑み、Appleデバイス管理について「基本的に信用しない」を第一義とするZTNAの実践をガイドする。今までのセキュリティはシートベルトの様なパッシブセーフティ、ZTNAは先進の衝突安全装置の様なアクティブセーフティと言えるのではないだろうか。企業は安全と安定の上に常に成り立つパッシブ&アクティブの両輪が備わるセキュリティが、これからのビジネスを推進させる基盤となるのではないだろうか? IT部門だけでなく、経営層にも本書をご一読いただきたい重要な内容となっている。