すべてのビジネスにおいてITの関わりなくしては、成長のみならず維持継続も難しい。特にクラウド、データ、アプリケーション開発などのキーワードは、企業成長や企業競争力向上に貢献する要素として広く注目されている。

 

中でもクラウドは、あらゆる施策の素地であり、パフォーマンス向上の源泉ともいえる。また、パブリッククラウドの発展によって、オンプレミスと比べて柔軟性に富み、何よりもコスト面に魅力がある。多くの企業がクラウドへと向かう今日の潮流を生み出しているが、クラウドへの移行は組織事情などに左右され一筋縄にはいかない。当然、綿密な計画をもって臨まれ、多くの取り組みと複数の段階を経てクラウド環境が稼働に至るだろう。稼働時にクラウド移行の成否を問われ、ビジネスに根ざした広域な視点で明確に回答できる組織は限られている。大半の組織が“コストが〇〇%節減された”“リリースが早まった”“生産性が向上”など局所的であっったり、感覚的な成果で成否を評価しているいるのが実状といえる。

 

企業組織の経営判断はデータドリブンであるにも関わらず、素地であるクラウド移行について曖昧さを許容している状態は実にアンバランスで矛盾を禁じえない。本書「クラウド移行モニタリングへの必須ガイド」では、クラウド移行における初期段階でのインストゥルメンテーション(対象内部の状態を数値情報などで可視化)の重要性と適切な実施について解説する。クラウドへの移行について、主要クラウドベンダーでは計画、移行、実行の3フェーズに分けるが、各段階でのモニタリングについては言及されない。本書では、第一に単一のアプリケーション移行前のオンプレミス環境の負荷状況の把握を推奨し、ベースライン確立の重要性を掲げる。移行中の問題解決から、実行の最適化、最終な評価に至るまでモニタリングの役割を図表とともに整理し、「移行計画」「ワークロードのクラウドへの移行」についてはNew Relic社製品を俎上に載せ、より詳細な実施手法を解説する。クラウド移行においても、ビジネスを見失わないデータドリブンの徹底は、企業組織に膨大なメリットをもたらすはずだ。