業務生産性を向上させたい。その手段を巡っての議論は尽きないが、しかしオフィスワークという意味では「クラウド」の存在を抜きには語れない。顧客名簿や在庫などの重要データを、オフィス内の特定機器で保存するのではなく、しっかりセキュリティを確保しながらでインターネット上で管理する。保存容量も柔軟に調整でき、なによりデータへのアクセス性は抜群。クラウド技術の発達とリモートワークの普及は不可分とすら言ってよいだろう。

 

クラウドは、その理念が世に知られてから10年以上経過し、まさに円熟期を迎えている。そんな今、改めてクラウドについて学びたい、知りたいという方に向けて公開されたのが本書である。定義から始まり、既存技術との比較、メリットとデメリット、用語解説に至るまで、クラウドに関する入門的情報を徹底網羅。ボリュームは実に40ページにおよぶ、本格的な1冊だ。

 

特に多くのページが割かれているのは、クラウドの導入法について。クラウドサービスとして現在よく知られているのがAWS、Microsoft Azure、Google Cloudの3種類だが、それらを初期セットアップして、安定運用するための監視体制を構築するまでのコスト感はどれくらいなのか。そして従業員5~50名程度の企業がクラウド導入するとは、どういうことなのか。豊富な事例とともに解説している。これまでクラウドとは縁遠いと考えていた中小企業の経営者・IT担当者の皆さんにも是非ご一読いただきたい。