近年、企業DXが盛んに推奨されているが、企業活動や事業戦略にデジタル領域が欠かせないことは以前より明白だ。各業界のトップランナー企業はいち早くIT投資を行い、企業競争力に持続性を積み重ねてきた。これほどまでに広くデジタル強化が叫ばれる背景にはクラウドの登場が大きく、所有から利用へと機能性能に対してコストのハードルを大きく押し下げたことにある。
クラウド活用の潮流は、事業規模を問わないデジタル強化とIT投資に感度の高い企業により、より高度化と高機能化を実現できる今日を形成した。一方で、オンプレ、クラウド、ハイブリッドクラウド、マルチクラウド環境といった複雑な構造を企業インフラにもたらした。企業ネットワーク(NW)担当者は複雑さを把握整理し、快適さと安全性を提供すべく日々管理運営を実践している。ある意味企業組織を駆け巡るビジネスの血液はNW担当者の双肩に掛かっているともいえるだろう。しかし多要素が繋がり連携するゆえに、サイバー攻撃の脅威もある。仮に既存の環境構造に万全の対策を講じても、クラウドのメリットでもあるスケールアウトに柔軟に対応できるだろうか?環境や組織体制などの差違はあれども、NW担当者は管理の複雑さという呪縛から解放されることはない。
本書は、クラウド化に伴う企業ネットワークの構築・運用の諸課題について5つ事例を掲げ、抜本的な解決方法を提示する。解決の主軸にNaaS(Network as a Service)を据え、前出の課題のみならず、昨今需要が急拡大したテレワークによるセキュア通信の確立などについても、既存環境の有効活用を視野に入れた解決策を提示する。属性と社外を含めたあらゆる方向からのアクセスに対して、NaaSがハブとなるメリットは大きい。本書の前段で提示される課題は、クラウド化に進む企業に必ず立ちはだかる壁といえ、現在の自社のネットワークインフラがこれらの課題を解消できているか是非とも本書でチェックしていただきたい。大局的見地からクラウド化は推進され、快適さと安全性に加えクラウドのメリットを殺さないことが肝要といえるだろう。貴社のクラウド活用の深度を問わず、NW担当者、デジタル強化を求む経営層にも本書のご一読をおすすめする。