ITはビジネスに深く関わり、企業はITを駆使することで収益を上げ発展を目指す。ビジネスパーソンならば誰しもが認識する事柄であるが、根幹を支えるハードウェア、オペレーティングシステム、データベースすべてが正常に動作することで成立している。
根幹を支えるこれらの要素にはメンテナンスやアップデートが欠かせず、物理的な寿命なども含まれる。また、より積極的な活用を欲せば拡張やアップグレードも必要になる。企業のデータ活用が推進される近年では、データベースの移行とアップグレードは企業活動に随伴するプロセスといえるだろう。しかし移行とアップグレードにはダウンタイムやデータロスといったリスクも高い。失敗するような事態ともなれば、企業活動の血流は滞り収益も失い、収拾も容易ではない。故にデータベース管理者を筆頭にプロセスに関わる人員のストレスレベルは心体ともに高い。各所に不安を抱えつつ、コストと人的リソースを大量投入せざるを得ないという、多くの現代企業が抱える不条理があるのではないだろうか。
本書「移行およびアップグレードのシンプル化」では、大規模な移行またはアップグレードデータに臨むデータベース管理者に向けた3部構成で、プロセス改善への道のりをガイドする。パート1では、移行とアップグレードの実状を明らかにし、失敗する要因になどついても言及する。パート2では、従来のツールや手法から利用できるものとその長所と短所を分析し、適切なツールセットの重要性を説き、プロジェクト後の生産性向上に貢献する機能についても提言する。パート3では、具体的にOracleデータベースの移行とアップグレードを想定し、データ・レプリケーション・ソリューション4製品を俎上に載せ5項目で比較展開する。移行とアップグレードの目的を明確に掲げ、取り巻く複雑な問題を解きほぐす丁寧な内容となっており、限りある時間をIT管理からビジネスの革新へと差し向ける効果が期待される。データベース管理者のみならず、日々企業力向上を目論む経営層にも本書のご一読をおすすめしたい。