データがますます価値を高め、テクノロジーが業務の軸となる昨今、サイバーセキュリティを考慮しない企業は皆無といえる。セキュリティなくして企業は体を成さず、組織メンバーに至るまで全体的に意識は向上傾向にある。

 

しかし高い意識を持っていても襲いかかるサイバー攻撃の実像が見えなければ、対策効果も実行性も帯びることはない。近年ではクラウド活用の標準化やハイブリッドワーク浸透など、社会を含めた環境変化も大きく、企業組織全体で適応していく局面は増している。目まぐるしい変化に不具合・盲点が発生するリスクは高まり、付け入る隙を常に窺っているサイバー犯罪者は見逃すことはない。サイバー攻撃は愉快犯的なものから営利目的になり、攻撃対象は個人から組織へとシフトしている。企業活動の目的は利益の追求であり、奇しくもサイバー攻撃においても目的は利益の追求といえる。

 

本書「2022年ランサムウェアトレンドレポート アジア太平洋版」ではITリーダーを対象に、自社環境にランサムウェアが及ぼした影響、修復手段と将来を見据えた戦略について実施された調査をまとめ、サイバー攻撃のデータとともに実像を明らかにする。データが攻撃者の効率と浸透力が増している現象を示し、中でも多くの企業が身代金の支払に応じている事実に驚かされる。さらに「支払ったが、データを復元できなかった」ケースも存在し、サイバー犯罪者の卑劣さを露呈する。サイバー攻撃による一時的な業務の停止や遅延は、企業体の血流の滞りともいえるが、復元できない状況は血液自体が抜かれているに等しく、場合によっては企業を死に至らしめる。本書は、多くの読者諸氏が活躍されるアジア太平洋地域に特化したデータであり、意識ではなく戦略でサイバー攻撃と対峙する重要な内容となっている。