企業のITへの投資比重の高まりとともに、システムインテグレーターへの顧客からのニーズも多様化し、現場は多忙を極めている。ビジネス展開に先進技術が不可欠な現代、前線に赴くエンジニアはにも最新の知識が必要であり、知識に基づき作業を効率的にこなす実行スキルも要求される。物品売買とは異なり顧客の要望を形にするサービス提供は難度も高く、それを実現させるのがエンジニアのスキルといえる。トップランナーのSI組織には、突出した一人の抜きん出たスタープレイヤーもいるが、よりも個々の高いスキルで形成される組織力を有するケースが多い。それでは常に最新技術を備える劣化しないエンジニア力の源泉はどこにあるのだろうか?

本書は、システムインテグレーターにおけるエンジニアのITトレーニングとして、Red Hat Learning Subscription(RHLS)を利用した、NECネッツエスアイ株式会社の事例をレポートである。社内で講義等を中心とした研修を展開しても知識記憶は向上するものの現場でのスキルの向上まではなかなか望めない。自ら手を動かし作業を経験することで得られる経験記憶が伴うことでスキルの向上が期待されるが、実案件で失敗や遅延は許されない。クラウドベースで提供される「ラボ」を活用したハンズオンで得られる経験の向上、スキルアップの効果を体験した経験談が本書である。独自で整備することが困難なハンズオンの環境が提供されるのみならず、コミュニティ参加など学びのモチベーションを維持し、組織内への良質な波及効果など、注目に値する内容となっている。組織としてエンジニアスキル向上をめざす企業人・経営層にもご一読をおすすめする。