市場のポジションは多くの業界において、企業の事業規模で決していた。つまり大企業が常に上位に位置し市場を占有していた。しかし現代の企業競争力は事業規模のみで発揮されることはなく、ヒト・モノ・カネの経営資源の潤沢さだけで企業成長が約束されることはない。

 

近年、業界を問わず企業生産性の重要さが各所で指摘されている。ここで言及される生産性とは単なる物量というよりも“スピードと品質”についてといえるだろう。すでに多くの企業のビジネスにはデジタルテクノロジーが浸透しており、特に社内でソフトウェア開発を行う企業は、開発能力が企業力に直結してくる。また開発以外でも社内外に提供するサービスの信頼性には迅速で適切なインシデント対応が必須となる。いずれも優秀なエンジニアの存在が大きいものの、一人のエンジニアで企業の“スピードと品質”を担保することは不可能と言え、やはりチームが肝となる。速く優秀なチームを構築できる企業が市場優位性を発揮する時代となってきたのではないだろうか。ソフトウェア開発現場にDevOpsが浸透して以来、スピードは上がるものの、日に何度もデプロイを繰り返せる企業とそうでない企業との格差は大きくなっている。

 

本書は、違いを生む根拠を開発者の速度に置き、Slackを俎上に載せて“スピードと品質”に根ざす生産性向上について解説する。チームで動いてリリースするためにはチームメンバーだけでなく、ステークスホルダーとも連携しなければならない。多くのやり取りが飛び交い、煩雑さはツールで補完するが、つまづきや重複は生じ、プロジェクトは混乱をきたし、集中力は都度削がれる。本書では、人的システムと機械的システムの接点の重要さに着目し、Slackで実践できるアプリの連携とタスク自動化の具体的な活用を紹介するとともに実例と調査数値による効果をも収録している。組織ぐるみで情報、履歴をSlackに集めることで各メンバーは必要な状況を速やかに把握でき、重複なしの連携が高まる。本書は、Slackの利用の有無を問わずビジネスパーソン必見の内容となっている。