今日、企業は生産性の向上によって企業競争力を高めながら、働き方改革など従業員への労働環境への配慮も欠かせない。さらにコンプライアンス、内部統制なども同時にクリアに保つ責務をも担っている。社内制度の施策も重要だが、「働き方」と「生産性」の両立にはデジタル技術活用が有効な手段として広く認知されている。特にクラウド活用の常態化は歓迎され、クラウドサービス+モバイル端末の進化は「場所と時間」の制約から解放し、労働環境を革命的に変化させている。

しかし、クラウドサービスの複数利用はユーザー操作の複雑化を強いるだけでなく、基幹システム等の“重要領域”への、不特定環境からの頻繁なアクセスが急増する。セキュリティの見地から看過できない事態が起こっている。つまりは、エンドポイントのセキュリティと使い勝手向上という、きわめて高度な「エンドポイント管理」が市場からの要求である。

本書は、モバイル端末の徹底活用に活路を見いだした企業の取り組みを紹介する。頑強なセキュリティとさまざまなクラウドサービスへのパスワードレスでのサインオンを実現するだけでなく、iOS端末の管理・運用負荷の軽減にも成功している。さまざまなシステムを並行利用する企業も多いが、管理・運用部門の負荷が圧倒的に高まってしまい、一部の労働集約な過労働の上になり立つケースも散見される。本書で取り上げる事例では、部門を問わずすべての従業員に対し、ユーザー体験の向上と生産性が両立された点が注目に値する。クラウドサービスの活用が定着した企業が“次なる一歩”として参考にすべき内容といえる。広くご一読をおすすめする。