近年、ビジネス環境と働き方は大きく進化をとげていた。これは、デジタルトランスフォーメーションの潮流によるところも大きいものの、その取り組みの熱量は企業によってまちまちであった。しかしながら、緊急を要するコロナ禍によって、あらゆる企業がいっせいにリモートワークにシフトせざるを得なくなった。

 

これにより、企業を取り巻く環境は大きく変化し、これまで気にすることなかった細かい業務にも明確さが求められ、新たなルール策定や業務プロセスの改善が必要とされてきた。この様な環境の中で、これまでの様なスタイルのコミュニケーションは以前と同様には機能せず、新たな手段が模索された。これらの多くは、デジタル技術を活用して試行錯誤が繰り返され、多くの組織が変化への対応と環境の再構築を経験したといえる。再構築・ブラッシュアップされた現状にある程度の充足を感じながらも、企業を取り巻く環境は現在も大きく変化し続けている。前進したデジタル化をいかに持続的成長に結びつけるか?今こそ組織として一考すべきタイミングといえるだろう。

 

本書「多様化時代における組織/人財戦略」は“変化に強い組織づくり”をテーマに持続的成長を実現する組織の条件とナレッジマネジメントについてレポートする。企業が持続的に成功していくためには、組織や人財の成長が続くことは欠かせない。本書では成長の定義を示すとともに、ナレッジマネジメントの重要性に焦点を絞り、強い組織づくりに欠かせない3つのポイントを丁寧にわかりやすく解説する。また、後段ではSlackを活用したナレッジマネジメントの具体例を展開する内容となっている。ナレッジマネジメントと聞くと“共有”とイメージされがちだが、すべてを漏らさず広く共有することは必ずしも得策ではなく、現実的でもない。本書内では「捨てるべき経験値と残すべきもの」と指摘するなど、勘所を押さえつつも目的と実践に立った言及に徹底される。以前と比べ、企業における各種ツールの導入もハードルは下がり、デジタル化に対する親近感も増しているが、確かな方向性と戦略なくしては成長は望めない。企業成長への契機として本書のご一読を強く推奨する。